小説:「三四郎」より2

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小説:「三四郎」より2

前回に引き続き、「三四郎」から一部引用させていただきましょう。

女はこんな事をいう。――
子供の玩具(おもちゃ)はやっぱり広島より京都の方が安くって善(い)いものがある。
京都でちょっと用があって下りたついでに、蛸(たこ)薬師(やくし)の傍で玩具を買って来た。

久しぶりで国へ帰って小供に逢(あ)うのは嬉(うれ)しい。しかし夫の仕送りが途切れて、仕方なしに親の里へ帰るのだから心配だ。夫は呉(くれ)にいて長らく海軍の職工をしていたが戦争中は旅(りょ)順(じゅん)の方に行っていた。

戦争が済んでから一旦帰って来た。間もなくあっちの方が金が儲(もう)かるといって、また大連(たいれん)へ出稼(でかせぎ)に行った。始めのうちは音信(たより)もあり、月々のものも几帳面(ちゃんちゃん)と送って来たから好かったが、この半歳ばかり前から手紙も金もまるで来なくなってしまった。

不実な性質(たち)ではないから、大丈夫だけれども、何時までも遊んで食(たべ)ている訳には行かないので、安否のわかるまでは仕方がないから、里へ帰って待(まっ)ているつもりだ。

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三四郎が寝ている間、女は隣の爺さんに身の上話を始めます。上記の部分は、ふと目が覚めた三四郎が聞き耳を立てていた話です。
すべて女の話ではありますが、かぎ括弧で括られていませんね。

小説ではかぎ括弧があっても戯曲のように感情豊かに、また登場人物になりきって読んでしまうと作品の雰囲気を壊してしまうおそれもありますので注意が必要です。

ここでは女の思いを踏まえながらも、あくまでも三四郎の視点で物語が進んでいるという事を考え、できるだけ淡々と読むのがよいかと思われます。

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