小説:「三四郎」より

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小説:「三四郎」より

練習用の小説として、「三四郎」(夏目漱石)をご紹介しましょう。

小説はセリフが少なく、情景描写が細やかな文章です。また、読み手のリズムで句読点が入っています。「、」や「。」が入る場所での登場人物の心情や情景の移り変わりなどを考えながらまずは黙読をしてみましょう。

「三四郎」では昔の漢字が使われています。読めない漢字には事前に振り仮名をつけ、スムーズに読めるよう準備をしましょう。

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うとうととして眼(め)が覚(さ)めると女は何時(いつ)の間(ま)にか、隣の爺(じい)さんと話を始めている。

この爺さんは慥(たし)かに前の前の駅から乗った田舎者(いなかもの)である。発車間際(まぎわ)に頓狂(とんきょう)な声を出して、駆(か)け込んで来て、いきなり肌を抜いだと思ったら脊中(せなか)に御灸(おきゅう)の痕(あと)が一杯あったので、三四郎(さんしろう)の記憶に残っている。爺さんが汗を拭(ふ)いて、肌を入れて、女の隣りに腰を懸けたまでよく注意して見ていた位である。

上記は「三四郎」の冒頭部分です。「女」が慌てて列車に駆け込んでくる様がテンポよく書かれていますね。女の動きや見た目はとても目立っていたようです。三四郎のように聞き手にも興味を引かせるようリズムやテンポを考えて読んでみましょう。

ただ顔立(かおだち)からいうと、この女の方がよほど上等である。口に締りがある。
眼が判明(はっきり)している。額(ひたい)がお光さんのようにだだっ広くない。

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何となく好(い)い心持に出来上っている。それで三四郎は五分に一度位は眼を上げて女の方を見ていた。時々は女と自分の眼が行き中(あた)る事もあった。

爺さんが女の隣へ腰を掛けた時などは、尤(もっと)も注意して、出来るだけ長い間、女の様子を見ていた。その時女はにこりと笑って、さあ御掛(おかけ)といって爺さんに席を譲っていた。
それからしばらくして、三四郎は眠くなって寐(ね)てしまったのである。

女の見た目についてさらに詳しい描写があります。「お光」という女性と比べて、ここに出てくる女は顔立ちが整っているような表現で書かれています。
三四郎は気になって仕方がないといった様子で女をちらちらと見ていたようです。

小説は主人公の目線で物語が進むものが多いので、主人公の心情を代弁するように読むとより聞き手には伝わりやすくなります。

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